ケーブルワイヤーのお話

前回お話した「どうしてギアは右側についているものがほとんどなのか」の続編、今回は自転車の『神経』と言っても過言ではない機能『ケーブルワイヤー』について、勉強していきましょう。こんなこと紹介するプチ整備ブログって…なかなかないかも(笑。ま、お付き合い下さい♪

 

 

●速度を出す。止まる。なくてはならないワイヤー

当たり前のように走れるのは、この部品のおかげでしょう。変速機なら、速度から路面環境に合わせて負荷を調整が出来、ブレーキなら転がるタイヤに制動力をかけて、乗車している人の快適な速度を保て、安全走行の大きな一端を担っています。

もちろん受け手となる変速機、もしくはブレーキシステムそのものの貢献もありますが、その命令を伝える乗り手からの指示を忠実に伝える機能は、まさに自転車の神経と言えるでしょう。

 

 

●ブレーキがなかった時代、そしてロッドブレーキ

そもそも自転車が誕生した19世紀、この時の自転車はサドルにまたいで足で地面を蹴って走るという、ストライダー自転車(ドライジーネ)でした。当然ブレーキは「足」。制動するには、なかなか距離も足の力も、速度が上がるとともに、その制動力と減速技の難易度が比例していきました。当時を想像すると、きっと何台かは、街中で対人接触などの事故があったのではなかろうかと思います。

 (出典: la Repubblica)

 

そして前輪に直接、ペダルがついた自転車「ミショー型」、そしてピエロが乗ってそうな「オーディナリー型」へと変化。ピスト自転車の要領で、ペダルを足で踏み込み、回転させないことで制動する…そんなコツがいる乗り物だったことは変わりません。ただ後期モデルでは、ロッドブレーキがついたものが登場しているようですが…。1870年頃のお話です。

(出典:自転車モノクローム)

 

1879年、チェーン付自転車「ビクシレット」が誕生。それなりのブレーキシステムが汎用製品として取り付けられたのは、この「ビクシレット」からではないでしょうか(諸説あり。他の車両「ボーンシェイカー」からとも)。ロッドブレーキの原型の誕生です。当時は馬車などと同様に、木のホイールに金属板を巻いた鉄板、それに木材を擦り付けて制動する、ドラムブレーキのようなものなど、色んなブレーキシステムが個体ごとに使われていました。

このビクシレットでは前輪のみブレーキが装着されていますが、ゴム製タイヤ(今のタイヤの原型)に、鉄部品を擦り付けて制動するという仕組みを採用しています。これにより、ある程度の速度でも、制動距離が短く安全にコントロール出来るようになりました。

(出典:徒然ひとり言日記)

 

 

 

●ロッドブレーキとは

ロッドブレーキの仕組みは、構造がロッド(棒)でブレーキアームへと制御伝達するようになっています。現代ではワイヤーブレーキがあるので、どうしても比較しがちですが、ロッドブレーキの利点は「丈夫」ということにつきます。ただこの時代はこのロッドブレーキしかないので、一番信用が出来る構造だったことは頷けます。

ロッドブレーキ自体も進化を遂げ、最初はタイヤ部分に直接に擦り付けたりしていましたが (ゴムタイヤの普及がそれほどしていなかった時代)、徐々に空気入りタイヤの普及拡大により、ホイールに摩擦面をもうけて制動するシステム、もしくはキャリパーブレーキを使用した構造へと変化していきました。

ブレーキレバーが棒一本に見えるが、リアとフロントのブレーキはそれぞれしっかりと機能する。
当然リアへの制御導線もロッドである。

 

(出典:エイリンBLOG)

現代ではもう生産が終了してしまいましたが、整備のしやすさ、そして耐久性が優れていた利点があり、昭和時代は業務用自転車(警察官/ 郵便局 / 配達用など)に主に取り入れられていました。

ただしロッドブレーキの欠点は「重い」「自転車の形状(フレーム)に制限され、汎用しにくい」など。一番の理由は「ハンドルが何かのきっかけで必要以上にグルッと回すと、ロッドが干渉する曲がっちゃう」からでした。

 

 

 

●ワイヤーブレーキが誕生

ワイヤーブレーキが誕生したのは、おそらく1900年頃。しっかりとした記録は見つけられませんが、おそらくこのあたりからと見当はつきました。1890年代、空気入りタイヤが自転車にも採用、それでブレーキをリムや、リムの内側にこすり当てる構造が生まれています。また1895年にはフランス軍が折りたたみ自転車を開発。フランス陸軍の移動手段として、自転車が採用されたことから、この頃からワイヤーブレーキシステムが取り入れられていたのではないかと思います。

写真はイギリス軍の車両。しかし折りたたみ構造はフランス軍の自転車から参考したものらしい。(出典:Fabcross)

 

第一次世界大戦(1914〜)では、自転車部隊は世界中の陸軍で採用。そりゃそれまで馬に乗って移動していたことを考えると、自転車は餌や水をあげることもいらないし、携帯しようと思えば出来るし、いつまでも走れるし…。利点だらけの乗り物だったことが伺えます。

写真は第一次大戦中のイタリア陸軍。折りたたみ自転車をバックパックに取り付けて、山岳を移動中の写真出そうだ。(出典:wikipedia)

 

 

 

●考えられたワイヤーチューブの仕組み

ワイヤーを取り付けることは画期的でしたが、露出している以上、気候によって腐食が早く、途中で断線してしまう恐れがありました。そこで取り入れられたのが「ワイヤーチューブ」。チューブの中にワイヤーをくぐらせ、腐食進行を著しく改善できました。

現代ではワイヤーチューブの外皮「アウター」、しっかりとしたものだったらその内側に樹脂製の「ライナー」、そして最後に「ワイヤー」という構造です。この基本構造は実は20世紀初頭から変わっていません。

 

それだけでなく、ワイヤーは鉄線が編み込まれていますが、これにも理にかなった理由があります。ワイヤーは取り付けられる場所によって曲げたりすると、ブレーキレバーや変速機による動作に影響を及ぼします。一本のみの鉄線では、「テコの原理」のように支点があれば、力は伝達されやすいですが、支点が無いところでは力は伝達できません。

ワイヤーロープの仕組みは、自転車のように細くてもしっかりと編み込まれている。このイラストは林業で使用されるものだが、構造は同一だ。(出典:林業の安全作業情報)

そこでこの螺旋構造なるロープ構造により、引っ張る力、リリースされた力を均等に、どの場所でもどんな時でも動作出来るように仕上げられ、それを確実にするためにチューブの中を通し、ワイヤーをチューブ内で滑らせるという仕組みになったのです。

 

 

 

●良質なブレーキワイヤーとは

カスタマイズの究極は、きっとケーブルワイヤーの良し悪しにこだわる…というほど玄人レベルのお話ですが、基本的には、どのケーブルワイヤーでもシティサイクルであれば、速度も出ないし急制動も頻繁ではないので『大体なんでもいい』となります。つまり予算でご検討下さいってことです。

しかしこだわるなら…ロードサイクル。特にシブい出で立ちのロード。例えばフジサイクルのこだわりのメイドインジャパンな車両なら、ぜひこだわりたくなるものです。その時、必ずと言ってもいいほど知ることになるワイヤーケーブルメーカー『日泉』です。

 

『日泉』のステンレス・ケーブルワイヤーは、ワイヤーを編みこんでから研磨、「アウター」もしくは「インナー」との摩擦を極限までμ(ミュー)を少なくされた魔法のワイヤーです。もし取り付けたら…それは驚くほど軽く、しなやかです。シマノ製品との互換性も高いので、気になる方はご検討下さい。きっと感動出来る部品です。

 

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ただし取り付けには、タイコの形状や長さにも注意する必要があります。必ず各商品の確認をメーカーサイトからご確認のうえ、ご購入ください。

 

 

というわけで、今回は語っちまいました。

何かの参考になれば幸いです。

 

 

それでは今日も元気にいってらっしゃい♪

 

 

 

 

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