自転車のボルト&ナット 〜その1〜

自転車含む全ての車両には、部品を固定するボルト(ネジ)がついています。溶接部分を除いてこれらボルトが各部品をつなぎ合わさって「車両」となっています。

「何を当然なことを…」

そうです。当然です。しかしこの「当然」のことを毎日の走行で支えているボルトの苦労!?は、非常に重要で普段見えない『当然』の働きをしているからこそ報われていると言ってもいいでしょう。

そんなボルトへのねぎらいも込めて、今回はボルトの説明をしましょう。

自転車ボルトは規格でおおよそ決まっている

日本製全ての一般車両のボルトには、安全性と品質管理基準に基づき、JIS(日本工業規格)で定められた水準で製造加工されています。自転車ももちろん、このJISに基づいた自転車用ボルトを使用しなくてはならないのです。「ISO(国際標準化機構)」もありますが、JISはこのISOに沿って規格補完をしていますので、差はあまりありません。

一般的に自転車用のボルトには『BC』記号が表記されたものを使用、使用するボルトは、大きく分けて「一般用」と「スポーク用」の2種ボルトを部品と用途に応じて主要箇所には装着固定されています。

六角穴付ボルトについては、安定の締め付け力、省スペース化が図っている部品を合わせる際に使われることが多く、ハンドルバー、ブレーキシュー周りなどでの使用されているのはそのためです。スポーツ自転車には、この六角穴付ボルトを大多数使っているのにも頷ける理由です。

サイズはどうなんだ?

では一般自転車で使われているボルトは、どんなサイズが多く使われているのでしょうか?

一般自転車は大雑把にいうと昔から仕組みや構造が変わってなく、JIS規格もその構造に基づいて規格設定(JIS B 0225)をしているので、主に使用される範囲が限られています。

簡単にまとめると下記のようなものになっています。


BC5/16 :前ハブ軸
BC3/8 :前ハブ軸
BC7/16 :後ろハブ *耐荷重用
BC1/2 :ペダル軸、ギヤクランク
BC9/16 :ペダル軸、ギヤクランク
BC11/16:ハンガ(左)*ハンガとはB.B.周りの部品
BC3/4 :ハンガ
BC31/32:前フォーク軸
BC1  :前フォーク軸
BC1.29 :後ハブ軸止メナット(左)
BC1.37 :後ハブ、小ギヤ、フリーホイール

*JISで定められているボルト規格を抜粋

これら以外で使用されているボルトサイズは、ママチャリではバラバラな傾向がありますし、特にスポーツ系車両は先述の通り「六角穴付ボルト」「トルクスネジ*」を多用されているので、使用する工具を定めにくいことも多々あります。

なぜボルトヘッドのサイズが違うのか

「工具が定めにくかったら、必要な工具を揃えるのにお金かかるやん」

おっしゃる通りです。
しかも…日本メーカーと海外メーカーで、指定された工具じゃないと取り外せないということも多々あります。事実それらが脳裏に浮かんだら、整備に入る前に車両メーカーなどに問い合わせをしてから作業に入りますが、この段階までくるとD.I.Y.整備の範疇を超えた作業やコスト(工具購入など)がかかるので、素直に自転車屋さんに相談された方が良いです。

ただ「どうしてメーカーによって工具が違ったり、専用工具があるのか」ということは、ちょっと知っておくのはいいかもしれません。

大きな理由としては『開発されたシステムを守る』『軽量化を図る』『専門的整備士(プロフェッショナル)を守る』ということから技術とブランディング向上を狙っているのだと思います。その中で『軽量化を図る』ということは説明がつきやすいので、一つの例『ボルトヘッドサイズの違い』を具体的に説明しましょう。

▼ ボルト集まれば、まぁまぁの重量になる

自転車に付属しているボルトたちは様々な形がありますが、フレームを中心にたくさんの部品が付いています。その固定をしているのはボルトやナット。大きさや種類にもよりますが、仮に「10g程度/ボルト1本」「10g程度/ナット」とした場合、その総数は、カゴや荷台、泥除けカバーなどなど見積もると、ざっと50セットほどになるかと思います。

1セット20gですから、50箇所に自転車に付属されているとした場合、その重さは1kg。携帯電話3-4機ほどの重量です。この概算計は前後あるにしても、なかなかの重さですよね。

そこでスポーツ系自転車を筆頭にして、パーツだけでなくボルトなどの固定部品の軽量化を図られることになるのですが、ママチャリなどの汎用的一般車両は、その辺りはあまり追求されてない…かも?

ではどんなボルトが使われているのか?
次はボルトの種類をみていきましょう。

▼ おおよそ3種類。なんとなく知っておこう

世の中にボルトの種類には3つ存在していて『小型ボルト』『標準ボルト』『高力ボルト』があります。自転車に使われるボルトは主に『小型ボルト』が使われています。

小型ボルト… 全ての車両、家電などでもよく使用される
標準ボルト… 家具などの日用品で使用
高力ボルト… 硬度が高く強い力で締め付けられる。大きな構造物に使用。

これらの種類から自転車に当てはめると「小型ボルト」が多用されていますが、ここからさらに軽量化を踏まえた独自設計のボルトが作られています。

「高力ボルト」は、主に建築や大型の構造物で使用されるものだ。丈夫で耐荷性も優れた部品だが、自転車にはここまでのボルトは必要ない。もし鉄橋などを通りかかったら少し見上げてみよう。「あっ高力ボルト!」と、その大きさや質感から「自転車にはいらねーなー」と感じるはずだ。

そこで揃えておきたい工具サイズが…これだ

自転車だけでなく自動車やオートバイには軽量化を図る(燃費向上)&小スペースでの取り付けのために、あえて変則的なボルト頭のサイズが使われています。

それらの変則的なボルトは、例えばボルト頭が薄い(…と言っても禿げではない)形状のものが代表的でしょう。

一概にも言えませんが、charichariの整備感覚では、以下のスパナやレンチなどのサイズは、こんな風に分類されてきます。

▽自動車を含む車両でよく使用されるボルトサイズ
8mm / 10mm / 12mm / 14mm / 17mm / 19mm

*クルマで時々困るボルトサイズ
 13mm / 16mm / 18mm (欧州車や日産を中心に使用されてきている)

*オートバイで時々困るボルトサイズ
 11mm

*自転車でよく困るボルトサイズ
 15mm

自転車の整備では17mmや19mmを使用する機会は、ほとんど出会いませんが、家庭用で家具などのDIY、修繕などをも活用する工具として揃えておくと、いざと言うときに困りません。…と言うか、この大きなサイズたちはモンキーレンチでフォローすると考えて大抵、問題ないと思います。

ただ近年では『トルクスボルト』と呼ばれるボルトも登場しているので、自己整備する側も工具が増えて大変…です。

(出典:Gosho)
六角ボルトより安定した締付け、いたずら防止にも一役買う部品。ロード系に多く見られる。

ボルトの適正締め付け値(あたい)とは?

ボルトの種類やサイズがわかったところで、今度は適正な締め付け(トルク)の度合いについてお話します。ボルトを強く締めるとしっかり固定されていいかもしれませんが、経年するとボルト頭が破損(首折れ)する恐れがあります。また弱いと車両が走行中に分解してしまう恐れがあります…ちょっと言い過ぎか。でもそういったことを極力、起こさないように『適正トルク』をボルトに応じて対処してあげることが必要です。

トルク値については、各車両のサービスマニュアル(取扱説明書)に記載されている数字を参考にします。しかしトルク値まで記載されている自転車のサービスマニュアルは国産車でも多くないので、以下を参考にして頂ければ良いかと思います。

(出典:自転車探検より引用)

このトルク値を参考に、どうやってボルトを締めていくのか?それには「トルクレンチ」というものを使っていきます。トルクレンチは、トルク単位[Nm(ナノメートル)]で、トルクレンチにあらかじめ設定してやり、締め付けていきます。その設定値に満たしたら『カチっ』などの音がなります。最近では電子音やランプで教えてくれるトルクレンチもあります。

SK11 デジタルトルクレンチ 専用ハードケース付き SDT3-060(1コ入)【SK11】

オススメする工具たち

ボルトについて、たくさん徒然と書いて来ましたが、ボルトを緩めたり締めたりする工具がなければ、ボルトやナットを扱うことが出来ません。工具は必要です。あまり高価な工具は一般家庭では必要ないかと思いますので、信用あって使える工具たちを中心にご紹介しましょう。

ボルトについて、たくさん徒然と書いて来ましたが、ボルトを緩めたり締めたりする工具がなければ、ボルトやナットを扱うことが出来ません。工具は必要です。あまり高価な工具は一般家庭では必要ないかと思いますので、信用あって使える工具たちを中心にご紹介しましょう。

まずは工具を揃えていこう

まずはソケットレンチを揃えていく、もしくはモンキーレンチを購入するなどが必要となりますが、それらはコンパクトセットとして比較的安価で入手できます。例えばこんなの…。あ、高価な工具は今回はご紹介しません。悪しからず。

▼ ボルトを締め付ける工具セット

SK11 3/8 ソケットレンチセット 工具セット ツールセット 整備工具 TS-312M ラチェットセット ラチェットレンチ

11mm以外、一般的に使うサイズが厳選されてまとめられた工具セット。サイズ感もカワイイので女性もお求めやすい!? …それは好みの問題だけど、1セットあれば便利かと。


▼ サイズ不問!万能モンキーレンチ

【メール便可】SK11 モンキレンチ SM-250JIS 4977292212823 [モンキーレンチ モンキーレンチ]

通常のボルトで使用できるモンキーレンチ。どのサイズでもマルチに発揮してくれる便利な工具だが、しっかりとボルト頭を合わせてから回さないと「ズリッ」と舐めやすいので、ボルト頭のサイズとモンキーレンチの調整幅は丁寧に合わせよう。


基本的にこれらでご家庭での一般整備は事足りるかと思いますが、ただ整備内容によっては狭いスポットでのボルト締め付けをする場所があります。代表的な例としては『リアハブ周り』ですかね。こんな薄型レンチがあればその問題は解消されます。

▼ 狭い場所にスッと入る。便利な薄型レンチ

藤原産業 SK11 極薄スパナセット SSW-06HSET

いかがでしたでしょうか?

今回はボルトの基本知識をダイジェストでお伝えしました。まだボルトについてご紹介したいことがありますので、次回もご期待下さい。

それでは今日も元気にいってらっしゃい!

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